現代のライフスタイルそのものが人を引きこもらせる要因となる。『ストレス脳』
つくづく、脳の病気だと思う。
うつは「心の風邪」と呼ばれるが、
実感としては、「脳の疾患」だ。
心は脳でもあり、脳は身体でもあり、身体は心でもある。
うつになると、この3つの機能が正常ではなくなる。
この3つは円のような関係で、どこが始まりか、どこが最も大切かなどは、
分からない。
だから、「心の風邪」は、心に主要な問題があるように感じるので、
誤解を生む表現だと思っている。
(誰にでもかかりうる病気だ、という意味の表現なのだとは思うが)
精神科医の著者による人類の脳や精神、身体の考察の本。
前作『スマホ脳』の方が有名かも。
ちょうどうつになったころタイムリーに発売されて、夫が買ってきた。
それが、「バナナ食って走ってこーい。」につながる。
以下、要約。
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私たちの脳は、1~2万年前から大きく変化していない。
「生存」するために「不安」や「防御」は必要なメカニズムであり、
常に健康な精神状態で幸せに生きることはできない。
脳は、ストレスを感じて「炎症」状態となったとき、
行動を抑制し、人を引きこもらせる。
この免疫反応が長時間に渡った状態が「うつ」である。
対人関係や過去のトラウマといった出来事はうつを引き起こす
要因として知られているが、一方で、
「運動不足」「座りっぱなし」「睡眠不足」「孤独」といった
現代のライフスタイルそのものが、1~2万年前の人類のそれと
明らかに違っており、脳にとって強い「炎症」要因となる。
また、このようなストレスが何か月、何年単位と長期間続くとき、
うつをひきおこしやすい。
一方で、どんなストレスを受けようともうつにならない人もいる。
それは、「うつへの脆弱性」が遺伝子で決められているからであり、
「遺伝子が弾を込め、環境が引き金を引く」と表現できる。
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私は、この本を読んで「私はうつになるべくしてなった」と悟った。
職場でパワハラやいじめがあったわけではない。
夜も寝られないほどの仕事のプレッシャーや、
毎日の持ち帰り仕事があったわけでもない。
ワンオペではなく、夫の協力を得られていた。
なのに。
なぜ?なぜ病気になった。なぜ自分はこんなに弱いのだ?
そうやって自分を苦しめて苦しめた。病気は一層悪くなった。
でも、この本のおかげで自分は特別弱いから病気になったんじゃない、
と思えた。
「運動不足」「座りっぱなし」「睡眠不足」「孤独」…その他いろいろ。
特別大変なことが起きたわけじゃない。
でも環境は、確実にじわじわ自分を追いつめていた。
そして、私には「うつへの脆弱性(遺伝要因)」がある。
「~しなくちゃいけない」思考などの性格的要因もある。
確かに、直近仕事内容が変わるなどの環境変化があり、引き金を引いた。
でもたぶん積み重ねたストレスは、1年単位の話ではない。
少なくともここ2,3年は思い当たる症状があったのに知らないフリをした。
まさに「遺伝子が弾を込め、環境が引き金を引く」
だから、私は人生でいつかは、うつになっていたんだろう。
ここで足止めしなければ、気が付かなかった。必然だったのだと。
それから、脳に関する本を読むなどして、脳や病気に対する
客観的な理解を深めた。
心、身体、脳のうち、一番ダイレクトにアプローチができるのは、
身体であると考え、運動を始めた。
もちろん、医学的治療も受けた。十分に休養もした。
(薬が効いてから、ようやく本を読むとか身体を動かそうとか思えた。)
そうして、回復に向かったと思う。
絶妙なタイミングでこの本に出会えて、本当に良かったと思う。
ゆうらり