きいろみずいろ

地方住み。2人の姉妹の母。時短フル。日常と経験と想いを綴ります。

あの作家も迷い、間違い、そして生きた『銀河鉄道の父』門井慶喜

先日、子どもと一緒に映画『ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア

を見に行った。

映画館は久しぶりだった。

上の子を出産して以来、映画館に行っていないと思う。

 

子どもの映画館デビューも夫(それより一人の時間が欲しかった)。

 

久々に見たドラえもんの映画は、

笑えるところも感動するところもあって面白かった。

その後子どもと感想を言い合うのも楽しい。

 

さて、映画館には映画化関係の原作本が売っていた。

面白そうな本をメモして、すぐ図書館で検索して予約。

 

作家宮沢賢治の父を中心とした宮沢賢治と家族の物語。

映画は2023年5月公開予定で、宮沢賢治の父宮沢政次郎を役所広司

宮沢賢治菅田将暉が演じています。

岩手県花巻で質屋を営む裕福な家の長男として生まれた宮沢賢治

色褪せない童話の数々を生み出しながらも37歳という若さで病死してしまう。

 

存命中は無名の作家だったが、賢治を信じ、作品を信じた家族の努力があり、

日本では知らない人がいないほどの作家となった。

 

宮沢賢治のイメージ

宮沢賢治といえば、『注文の多い料理店』『銀河鉄道の夜』『風の又三郎

などの童話を生み出した作家。

 

イーハトーヴと名づけた理想郷を背景として、

『雨にもマケズ』に描かれる人のような厳しさと優しさを兼ね備えた

聖人のようなイメージがあった。

 

でも実際は、長男でありながら実家の質屋を継ごうとせず、

人造宝石の会社を始めようとしたり、

宗教に陶酔し家を飛び出したり。

学生の間は、裕福な実家に金を無心することも多かった。

 

最終的には教師となり、妹トシの病気をきっかけに童話を書き始めた。

 

本来(という言葉は微妙だが)であれば、賢治の父政次郎のように、

学業優秀であっても進学せず、

家族を持ち、実家を継ぐのだろう。

 

それができない自分と向き合わねばならないとき、

どれだけの葛藤があっただろう。

 

押し込めた気持ちが爆発して、童話に結集したのだろうか。

 

妹トシの「あめゆじゅとってけんじゃ」の場面には涙が出た。

トシは優秀な女性だった。

もしかしたら賢治のように作家になっていたかもしれない。

容赦なく命を奪うこの時代の結核という病気は本当に恐ろしい。

 

『雨にもマケズ』の詩

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル

一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ

サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

 

『雨にもマケズ』では聖人のような人が描かれる。

でも最後に「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」で結ぶのは、

賢治のユーモアなのだ。

 

という父政次郎の解釈が心に残った。

 

賢治は、妹や弟たちをいつも楽しい話で笑わせる愉快な人だった。

 

 

 

 

ゆうらり